3月1日、2日の土日にりゅーとぴあで公演していた新潟演劇祭プロデュース公演「恋する世阿弥」
僕は初日の公演を観劇して来ました。
…って話は前の記事に書きましたね。
こちらです。「【勝手に感想と宣伝】芸術のミナト☆新潟演劇祭プロデュース公演 『恋する世阿弥』 (3/1、2)」
ここにはネタバレしない程度に書いたんですけど、全公演終わったので自由に書いていきたいと思います。
(写真はこの記事のためだけに撮り忘れたポスターを3月2日に撮ってきたもの)
「恋する世阿弥」という演劇、エキセントリックな演出、ギャグが盛りだくさん過ぎて最初はそっちに翻弄されてしまったんですが、見終わって振り替えると、実は人間の恋や嫉妬というとても普遍的なものを描いた極めてストレートな作品だったと思います。
変なキャラが次から次に登場しますが、要約すると、一人のイケメン能楽師と、彼を巡る二人の女性の物語だと思います。
一人目の女性は、新潟の女子高生。
彼女はイケメン高校生に恋をします。
しかし、彼が好きになったのは彼女より能だった、つまり能に恋してしまったわけです。
失恋した女子高生の恋心は、彼、そして能に対する嫉妬心となり、やがて生き霊となって彼に取り憑いてしまいます。
二人目の女性は、能楽の人間国宝の孫娘。
彼女は小さい頃から能が好きなのに、祖父からは全く認められずに育っていきます。
しかし人間国宝である祖父は、そこを訪ねてきたイケメン高校生のことはすんなり弟子にしてしまいます。
当然、彼女は嫉妬心を募らせ、にもかかわらず、いや嫉妬故に、イケメン能楽師となった彼と結婚することになります。
という訳で、女子高生と能楽師の妻、二人の恋心と嫉妬を描いたのが、この「恋する世阿弥」の大まかな物語です。
二人は同じ男性に嫉妬するんだけど、女子高生は純粋に恋心から、妻は能への憧れから、と違う理由なのが面白いです。
三角関係というより、イケメン能楽師、女子高生、妻、そして能を巡る四角関と言えるかも知れないです。
そう考えると、女性にもモテて能の才能にも恵まれたイケメン能楽師って、とんでもないスペックの持ち主です。
そんなイケメン能楽師ですが、彼には女子高生の恋心が生き霊となって取り憑いちゃってるわけです。
そんな作品の肝となる複雑な人物設定をですね、なんと「イケメンが女子高生の制服を着て能を舞いながら登場する」というまさかのネタで表現しちゃうんですよ。
この公演最大の出オチであり、最強にして最狂のキャラで物語の最重要人物を登場させてしまう!
もう、大爆笑ですよ!
しかしその強烈なインパクトがあるからこそ、物語をグイグイ引っ張っていく推進力となる。
しかも、それが能に取り憑かれ、生き霊にも取り憑かれた天才イケメン能楽師という人物を表現するのにこれ以上ない説得力を持っている。
いやー、本当よく出来てる!
そんな表現を思い付く中屋敷さん、やっぱり、すごいっす!
そして、こんな素晴らしい作品に出演された皆さん、本当お疲れ様でした!
てか、羨ましいです!才能に嫉妬です!
そう、嫉妬なんですよ。
この公演を見て、一番僕が刺激されたのは自分の嫉妬心なんですね。
一つ前のブログにも書いたんですけど、僕、初日に三回見たんですけど、三回見るとさすがに物分かりの悪い自分にも登場人物の感情とかも分かってくるんです。
それが、先ほど書いた恋とか嫉妬とかの強い情念ですけど、これが伝わってくるっていうか、もう突き刺さってくる、っていう感覚なんですよ。
それは何でかって考えたら、自分の中にも恋愛のトラウマとか嫉妬心とかあるからなんですよね。
そういう隠しておきたかったり自分でも気づかないようにしておきたい部分を、この演劇はえぐってきやがるんですよねー!
もうやめてー!ってなるんだけど、面白いからずっと見ちゃうんですよね。
だから観劇後はすごい疲労感に襲われるんだけど、これこそ演劇を見る感動だなって思います。
で、この疲労感が何かに似てると思ったんですけど、気づいてしまったんですよ。
これは、好きな人に頑張って告白したんだけど振られてしまった時の疲労感に似ている!
嗚呼、恥ずかしい!何が恥ずかしいって、こんな文章を書いてしまってる自分が恥ずかしい!
うわああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!
…こうして僕は生き霊となりましたとさ。
以上、「恋する世阿弥」の感想でした。